リモネン系接着剤を試す        須藤

back

 最近、模型用リモネン系接着剤という物が出てきています。リモネンというのはミカンの皮から抽出した成分で洗剤で最近利用されてきた成分なのですが、プラスチックを溶かす性質があるため、それを利用した模型用接着剤が何種類か発売されています。
 売りとしてはシンナー臭くない、天然成分で自然に優しいというところのようですが、 みかんの皮がプラスチックを溶かす?本当?って感じでちょっと得体の知れない感じがしました。そこで、いろいろ実験してみてどういう接着剤なのか探ってみたいと思います。ちなみに購入したのはシリウスの接着剤です。


1.匂い
 まず、匂いですがオレンジの匂いです。ただしかなり濃いめなんですね。使い終わってもしばらく部屋がオレンジくさいです。お部屋の芳香剤いらずですね。個人的にはきつい匂いなのですが、これリモネンの臭いなんでしょうかね。シンナーなんかは危険なのでわざと臭いを付けていると聞いたことがありますが、同じ意味なのでしょうか。ちなみに接着剤は透明でした。


2.シンナーとの相性はどうか
 オレンジですからなんとなく水溶性かなと思っていたのですが、全然混ざりません。シンナーにはよく混ざります。ブレンドして使うのもおもしろいかもしれませんね。濃度の調節?あまりいみないかな?


3.乾燥時間
 これ以降は比較対象としてA流し込みタイプ(タミヤ)、B通常タイプ(タミヤ)、Cリモネン系(シリウス)、Dラッカーシンナー(アサヒペン)を用意して比べてみました。ただし、厳密に条件を統一した訳ではありませんので、あくまで感覚的な比較です。
 実験の結果は乾燥時間が早い順にA、D、C、Dとなりました。リモネン系接着剤の乾燥時間は意外と遅いことがわかりました。ただし、Aは非常に広がりやすいため、空気に触れる表面積が広くなり乾燥が早かったということもあったようです。
 また、乾燥後Bはあんこの成分であるポリスチレンが残りますが、それ以外はシミしか残りませんでした。Cのリモネン系接着剤はあんこは入っていないようです。


4.プラスチックを溶かしてみる
 プラスチックを溶かす能力を実験してみました。万年皿にそれぞれ接着剤を入れ、それにキットのパーツを入れ、蒸発をふせぐためフタをして3時間ほど放置してみました。パーツは大量に余っていたトライスターの4号戦車の足回りのものです。
 出かけていたので途中経過を追うことはできませんでしたが、A以外は完全に溶けていました。リモネン系接着剤は十分にプラスチックを溶かす能力はあるようです。
 おもしろかったのはAの流し込みタイプで、スライムのようになっていてこれ以上は溶けないようでした。


5.プラスチックに塗ってみる
 流し込みによる接着は接着面に直接触れずに流し込む訳ですから、関係ない部分に接着剤が付いてしまいます。その状態を確認してみました。
 右の画像はパーツの上にたらして乾燥させた後の状態ですが、A以外ははっきりと残留物が確認できました。Bは含まれているポリスチレン成分なので不思議はないのですが、C・Dでも残留物が発生しているのが意外でした。おそらく乾燥時間が長いので、その間にプラスチックの成分が溶け出して固まったのではないのでしょうか。まあその分接着力は高いといえますが、リモネン系接着剤はラッカーシンナーと同様に接着剤のはみ出しには注意が必要なようです。

 
6.結論
 リモネン系接着剤の特徴としては、
  ・シンナー臭は無いが、みかん臭がきつい
  ・乾燥時間は比較的遅い
  ・通常の接着剤のようなあんこ成分は入っていない
  ・プラスチックを溶かす能力は十分
という感じでした。
 シンナー臭を気にする方には画期的な接着剤といえますが、能力としては流し込みタイプと通常タイプの中間的な性質で、どちらの用途にも使えますが、接着するまで多少時間がかかるなどマイナス面もあり、中途半端な気もします。ただ今後改良されてより使いやすくなる可能性はありますね。たとえばあんこになる成分を加えて、通常タイプとして使ってみるというのもおもしろいかもしれません。今後新しい使い方が見つかったら改めて報告したいと思います。