KV−1(Type 1941)   Trumpeter 1/35   鈴木

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製作年:2007年4月 

 素性が良さそうなキットなので、最低限と思う範囲で手を入れてみました。それ故、市販の専用ディティールアップパーツは使っていません。使用したのは、サフ、極少量のエポキシパテとワークの「黒い金網」。それと、キットのランナーを延ばした物、真鍮線少々。

 最初の作業は、車体を組んでいる装甲板の切り出し痕を再現すると言う事でした。まず、車体を組み、車体装甲板の縁の平行を出した後、根気よくカッターで刻み目を入れる事で表現しました。後は、車体前面にある増加装甲板の縁に、溶接跡をエポキシパテにて再現しました。

 次の作業は、車体上部給気口の網部分をワークの「黒い金網」を使い再現することでした。(画像@)今回も行き当たりばったりの作業を繰り返した為、車体後部にある排気部の金網はキットのままです。作業方法は、パーツの金網部分を注意深く切り取り、その部分に上から金網を接着しただけです。
 今回の作業の動機の一つに、メーカーが、車体上部パーツに給気ルーバーまで再現すると言うサービスをしてくれたから、と言うことも上げられます。(嬉しい事に、メーカーは給気口ネット部品を2種類も入れてくれました!)一見面倒くさそうに感じますが、注意深く、多少時間をかければ誰でも出来ますし、完成後の満足感は高いものがあります。図らずも、ボイジャーのKV用エッチングは持っていましたが、そのままでは車体との接着部分の厚みが薄く、金網部分の迫力が乏しいので敢えてこの手法を取りました。

 目立つ所では、ホーン・ライトの電線管の位置が違うので位置を調整。丁度、ホーンとライトの中心にくるようです。(画像A)少し太目の真鍮線で作り直し取り付ける。その際、装甲板の一部を切り欠き接着。今回は、そこから先のコード類はつけていません。その割には、電源ターミナルをランナーの輪切りで再現したりした。(う〜む、行き当たりばったりしすぎかな。)

 他、車体部品についてですが、製作途中でクラブの会長から助言がありました。それは、フェンダーの中心が引けていると言う事でした。見ると確かに引けがあります。これは、裏側のレール部分のモールドが影響している為のようです。他、気づいた所ですが、車体前部合わせ目の装甲板、後部上部の装甲部分に引けがあります。塗装後も目立つので、十分に処理をします。それと、引けではありませんが、ドライバーハッチの部分で、ハッチ外側にくる円周部分の接着あとですが、実車ではこのタイプは見えません。私は、散々悩んだ挙げ句、後処理にしたので大変修正しづらくて困りました。但し、この位置に、筋ぼりがある車体もあります。しかし、実際にある位置は、近くにあるリベットとハッチの中心あたりですので注意が必要です。

 砲塔について。(画像B,C)最初に、防盾を除き砲塔を組み上げます。次に、砲塔上下の繋ぎ痕を、伸ばしランナーを接着した後に溶剤系接着剤で溶かしつつモールドをつけます。乾燥させた後、砲塔上部両脇にある手摺り、これを真鍮線で作り直しました。基部は、エポキシパテで溶接跡を再現しました。
 そして次に、砲塔の鋳造再現です。誰しもソビエト戦車の印象はと聞かれると、荒々しい鋳造肌を想像すると思います。間違いなく、私もその一人です。今回も、製作前にネットや手持ちの数少ないKVの資料で軽くリサーチしました。残念ながら、工作終了後、重量砲塔と勘違いしていたかもしれないなと思っています。と言うのは、重量砲塔(トラペでは、軽量砲塔として販売している物)は、本当に荒々しい表面で、後部機銃部の装甲リング部分まで荒れています。結局は、この時の印象が強く、後に見た現存している実車写真では意外にツルリとした感じでびっくりしました。(T34のように、生産工場での違いもあるのかな?)やり直しも考えたのですが、模型映えを考えると、多少のアレンジが有っても良いのではと敢えてこのままにしました。

 話が前後しましたが、私の鋳造表現方法についてです。基本的には、サーフェーサーを使用しています。私の場合、製作に際してはサフをパテ代わりに使ったりと多用します。そこで、市販品を購入後、別の広口瓶に移し、上澄み液をギリギリまで捨てて濃い目にして用意しています。このどちらかと言うとドロドロさせたサフを、豚毛等の毛の堅めの筆でトントンと軽く叩き付ける様に、表現したい部分に施すわけです。乾燥時間も気にする程掛かりません。焦らず、自分が思っているイメージに、徐々に近づけていけば良いのです。他には、雑誌で紹介している溶剤系接着剤を使った方法もありますが、私は表面の処理のコントロールがしやすく感じているので、この手法をメインに使っています。仕上がりは、実際によく見て戴くと分かるのですが、慣れてくると、部分によって表現を替える事も出来ます。今回は、砲塔表面、砲塔上部の縁廻り部分、防盾基部、防盾本体の計4カ所で微妙に変えています。

 次に、塗装についてです。ソビエト戦車の色は、大戦初期の頃は鮮やかなグリーン系の印象がありますが、車体を重油で磨く様な事もしていたらしいので、グリーン系車体が茶色に汚れ変色した感じを狙って見ました。今回、初めてクレオスの水性ホビーカラーを使ってみました。まず、アクリルの暗色で下地塗装をします。その上から、H-73とH-80を1:1で調色したグリーン系の基本色を上塗りします。

 しばし乾燥後に、砲塔番号をファレホカラーの白で手書きで入れました。(画像D)この時、砲塔左右で同じ大きさになるように、簡単な外枠だけのマスクを作り、中に書き込んで行く方法をとりました。十分に乾燥させた後、油絵の具の茶系で車体全体にフィルターを施します。その後、再度別色(白、焦げ茶、緑色)にてフィルタリングを行いました。乾燥後、オリジナルに調色したパステル粉、スターダストのパステル粉(2色)にてウェザリングを施しました。パステルは、色々試しながら使っているのですが、なかなか、「これだ!」と言う具合にはなりませんでした。(毎度なんですが・・・)足廻りも同様に処理します。履帯は、暗色で下地色を塗った後に、パステル各色、茶(2種類)、ダークイエロー、最後に黒を所々に使っています。

 大体の塗装後、車体各部に金属的な光を与える為、いつものように鉛筆粉を使いました。(画像E,F)これは、雑誌に載っている様な画材の立派な製品では無く、子供が使った後の、ちびたコーリンの鉛筆(HB)を紙ヤスリで粉にしただけのものです。これを、綿棒等で擦り付けて使います。但し今回は、海外誌で見かけた画材用の色鉛筆(シルバー)を使って見たくて、Uniの色鉛筆”シルバー572(130円位)”を購入して所々で使用しています。鉛筆粉と併用する事で、見る角度により金属的な輝きが消えたり現れたりするのは、なかなか面白い効果だと感じました。他、車体上部(エッジ部分)、履帯にも同様に金属的な輝きを与えるのにも使用しました。

 排気管は、茶系の錆色と、オレンジ色のパステル粉を使いました。これも気の済むまで行います。排気口周囲には、黒のパステル粉を使い、車体上部にも排気煙が流れた痕を再現しました。最後に、排気管から漏れ出たオイルを、エナメルのクリアイエローを使って再現します。この時、車体上部にもオイルが多少飛び散った様に塗りました。

 殆どの作業が終わった後、時間をおいて何度か調整します。(大体2〜3日放置)今回も、見る度にどこかしら足りない点が見えたので、その都度修正しました。納得出来たら、完成です。完成後の姿は、古くさいデザインの中にも堂々としたドッシリとした風情が良い感じです。最も、デザイン的にそれほど面白みがある車輌ではありませんが、各種バリェーション、塗装を楽しむアイテムとしては格好でしょう。

今回使用した主な資料は、「concord "STALIN’S HEAVY TANKS1941-1945"」です。尚、砲塔mナ後の3は、私の想像の書体ですので、実際はどのようなものかは知りません。

 最後に、私の勝手なキット評です。確かにこのキット、価格も安く、作りやすいし、良くできていると思います。バリェーションも豊富で、コレクション性も高い。金属製の牽引ケーブル、クリア部品、履帯もベルト式との選択式ですし、オプションパーツも喜ばせてくれる様な物が入っています。丹念にリサーチも行われた、最新のKVのキットだと思います。ただ、ロードホイール、ポリキャップ、砲口の穴が偏芯しているのにはビックリさせられました。一時は、組んでいても、果たして無事に完成するのか妙な不安に駆られました。尚、KVU系の車体部品には、このような事は無さそうですが、こちらはフェンダーの幅が多少大きい様です。(実車もそうなのか?)良い製品を作るようになって来ているとは思いますが、まだまだ他社に比べ、基本的な部分で少々遅れを感じるメーカーではあります。だからと言って悲観する事は無く、その分今後の進化、新製品が楽しみなメーカーではあります。

完成品画像は展示室にて