jは、実は近代日本経済の縮図である。云々。本書は、そうした歴史的事実の羅列では決してない。本書を一貫して流れているのは、著者が模型に対して抱いてる深い愛情だ。云々」

 こりゃ大変だと、帰宅時に大慌てで書店へ。もしかしたら、模型関係に冷たい○の○に屋だから無いかなあと聞いたところ、あっさり登場。早速購入後、待ちきれなくて帰宅まで歩きながら読みました。大体2、3時間くらいで目を通したのですが、私にとっては、「田宮模型の仕事」より面白かった。

 戦前の、著者が模型に関わっていく(はまっていく)様や、終戦後のプラモデルとの出会い等々。とても興味深い。プラモデル興亡史と言いながらも、それ以前の話の興味深いこと。
そしてプラモデルの登場・・・。創世記の各社の興亡の興味深い話し。その他、私にとって幾つかの謎だった事が”ある程度”解けたのが一つの収穫だった。

 一つはスロットカー。小さな頃、見掛けたのは銀行員の叔父の家だけで、友人宅には無かった理由。本当に高かったんだなあ。でも、そこには各社の思惑が入り乱れて・・・。

一つは、PPC(プラプレーンコンテスト)について。その始まりから、謎だった終了まで。詳しくは言いませんが、「歪んだマニア意識を生んだ」とまで言われてしまった理由。コンテストを純粋に楽しむ、趣味なんだから大らかに楽しむと言う事が出来ない日本人的な土壌の発露?。
 中学の頃、学期末試験を捨ててPPCに参加していた。とにかく、楽しかったなあ。(成績は言わずもがな)ページ的には今一食い足りないところはあるのですが、主催者側の当時の生の声を聞くことが出来たのは、1980年の第10回終了後初めてではなかろうか?ある意味、ちょっとうれしかったかな。

 一つは、何故九州のモデラーは人一倍熱く、楽しむのが上手と感じていたのか。ゲルニカと言うクラブを初めて知った時、何故九州のクラブなんだろうと思っていたのだが、この井田氏をはじめとする、先達の熱い思いが九州と言う地に延々と受け継がれているのではなかろうか。特に九州プラモデル博覧会のくだりは、とにかく羨ましいの一言。こんなにも前に、熱心に九州の地でメーカー各社も熱い活動を行っていたとは。下手をすると、見本市も静岡では無く九州で、そしてモデラーズ合同展示会も行われていたかも。

 読後感は、さらっと読むには良いのだが、もう少し詳しくても良いのではと思った。日本のプラモデル創世記からの事を考えると、もう言っても良いだろうと言う事ももっとあるはず。読み物としてももっと面白くなるだろうし、良くも悪くも受け止めることが出来るモデラーも増えたと思いたい。「田宮模型の仕事」と同じ様に文庫化される事があれば、更に濃い内容になることを期待したい。

 現在著者は83才。日本の模型界に多大な貢献をした人物であることは間違い無く、ただただ深い敬意を表したい。これからも壮健で、是非次の夢に向けて挑戦して欲しいと思わずにはいられない。それほど熱い模型人生を未だに送っているのには、感心どころか羨望を感じざるを得ない。